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日本における総合診療医の普及を阻む3つの壁 – なぜ未だに発展しないのか?

日本の総合診療医は、その重要性を認識されていない。医療法による標榜問題、医師不足、役割の曖昧さが普及を阻む障害。


1. 総合診療医とは?

総合診療医は、患者の包括的な健康管理を担当する医師で、どのような健康問題にも対応できる幅広い知識と技術を持っています。彼らは特定の疾患や専門に特化するのではなく、全体的な健康状態を評価し、必要に応じて専門医や医療機関との連携を図り、適切な医療を提供します。

日本では、総合診療医の普及がなかなか進んでいません。その大きな理由は「見えない壁」「選べない壁」「報われない壁」という三つの壁にあります。まず、「見えない壁」は、総合診療医がクリニックを開業しても、その専門を外部に示すことが難しいという点です。医療法上で許可されている診療科名には総合診療が含まれておらず、標榜することができません。これにより、患者が総合診療医を探し出すことが難しくなっています。

次に、「選べない壁」は総合診療医の不足です。総合診療専門医制度が2018年に開始され、初めての専門医が2021年に誕生しました。しかし、その数は2025年においても約900名程度と非常に少ないのです。この専門医制度成立以前から存在したプライマリ・ケア認定医も含めると若干増えますが、内科医の数と比べると圧倒的に少ない状況です。

これらの壁により、総合診療医は「見えない」「選べない」状況に置かれており、結果として十分な普及が阻まれています。この問題を解決するには、社会全体で総合診療医の重要性を認識し、制度的なサポートを強化する必要があります。

2. 見えない壁: 標榜問題

日本の医療界では、総合診療医が社会に充分に認知されるには、まだ多くの障害があります。
それらの一つが、日本の医療法における標榜問題です。
総合診療医は、クリニックを開業しても、その専門性を示す「総合診療」という診療科名を外部に掲示することができません。
これにより、患者は自身に合った専門医を見つけ出すことが困難になっています。
\n医療法では、医療機関が外部の看板に掲げることができる診療科名が制限されています。
これは、日本専門医機構が認定する19の基本領域専門医の中で、「総合診療」だけがその名称を許されていないためです。
結果として、総合診療医は「内科」や「小児科」などの他の診療科名を掲げるしかなく、このことは患者が求めている総合的な診療にアクセスする妨げになっています。
インターネットで「総合診療」と検索するといくつかのクリニックが表示されますが、「総合診療」の定義が定まっていないことで、内科と皮膚科をまとめて総合診療と称する場合もあるため、患者にとっては混乱を招く要因となっています。
\nさらに、厚生労働省が運営する医療情報ネットでは、“総合診療科”は診療科目の選択肢に含まれていません。
そのため「何でも相談できる医師」へのアクセスは限られ、多くの人々が適切な医療サービスを受ける機会を失いかねない状況です。
これらの要素が複合的に影響し、標榜問題は総合診療医の普及を阻む大きな壁として存在しています。

3. 選べない壁: 医師不足

総合診療の発展において、「選べない壁」、すなわち医師不足は大きな課題です。
新しい総合診療専門医制度が2018年に始まり、2021年に最初の専門医が誕生しました。
しかし、2025年4月時点でその数は約900名にとどまっています。
内科専門医が数万人いることと比べると、その少なさは明らかです。
これは、日本の医療システム全体における総合診療の理解と支持が不足していることが一因であると考えられます。
欧米では、家庭医療が根付いており、地域社会での総合的な医療提供が一般的です。
日本でもこのようなモデルを引き入れようと、プライマリ・ケア連合学会が活動していますが、プライマリ・ケア認定医の数は4962名であり、依然として不足しています。
このような状況は、地域医療のニーズに対応できる医師の数を増やすための努力が十分に行われていないことを示唆しています。
また、医学生や若い医師たちに総合診療の魅力を伝え、そのキャリア選択としての価値を訴えることも重要です。
教育の段階から総合診療医を目指す志を育むためには、制度的なサポートやプロモーションが必要とされています。

4. 社会からの認識不足

総合診療医は、幅広い視野で患者の症状を判断し、最適な治療へと導く役割を担っており、大変に重要な存在です。ですが、日本ではこの分野がまだ十分に普及していないことが問題視されています。この一因には「総合診療の入り口が見えない」という現状があるのです。

まず、総合診療の定義そのものが非常に曖昧な点が挙げられます。総合診療は多岐にわたる科をまたいだ診療を行うことを指しますが、その具体的な役割や範囲についての周知が進んでいないため、一般の方々が「総合診療とは何か」を理解することが難しい状況にあります。このため、診療科を選ぶ際に総合診療科の存在が見過ごされがちなのです。

さらに、日本における医療機関の選択肢の少なさも問題です。「総合診療」と標榜することが現在の法令で許可されていないため、クリニックや病院が看板にそのまま掲示することができず、患者の目に触れる機会が乏しい状況が続いています。いざネットで専門医を探そうとしても、明確に「ここが総合診療科です」と示すことができないため、患者が選択肢を持てません。

このように、総合診療の入り口が見えない現状が、日本における総合診療医の普及を阻んでいると言えるでしょう。患者がどの医療を選択すべきか迷わないためにも、社会的な取り組みとして総合診療の立ち位置や役割をより明確に示していくことが求められます。

5. まとめ

総合診療は、身近な病気からさまざまな健康の問題まで対応できる医師として、地域医療において重要な存在です。しかし、日本においてはその普及が思うように進んでいない現状があります。

その普及を阻む最大の障壁として挙げられるのが、「見えない壁」「選べない壁」「報われない壁」の3つです。まず、「見えない壁」については、専門医であってもその存在が一般の人々には見えづらい問題があります。診療科名の標榜に制限があるため、総合診療医の存在を看板やネット上で簡単に確認することができないという課題があります。多くの患者が総合診療の必要性を感じても、アクセスすることが難しいのが現状です。

次に、「選べない壁」として、総合診療医の数そのものが少ないという問題があります。総合診療専門医制度が開始されたのは2018年であり、その後も増加のペースが緩やかであり、依然として内科専門医に比べると圧倒的に少数です。地域医療を支える基盤を整えるためには、教育体制の充実や医師の養成が急務であることがうかがえます。

総合診療の制度がまだ新しく、そこから生まれる医師が少ないことが「選べない壁」の大きな要因ですが、既に家庭医療を学び地域で実践している医師もいるため、これらの医師の活躍も期待されます。しかし、それでもなお、「報われない壁」が存在し、総合診療医が十分にその能力を活かしきれない現状があります。総合診療が日本で普及し、さらに発展していくためには、これらの壁を一つ一つ乗り越えていくための制度や社会の理解が必要です。

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