
1. 日本人の医療制度に対する誤解
また、軽症の患者が理不尽な要求をするケースも少なくありません。これらの要求は、医師や医療スタッフにとっては一種のストレスとなり、時には医療現場の効率を低下させる原因ともなります。こうした状況を生み出している背景には、医療制度が私物化されつつある現状があります。
患者と医療従事者の間には、しばしば不信感や誤解が生じています。その要因の一つに、限りある医療資源をどのようにうまく配分するかという問題があります。日本の制度は、フリーアクセスや国民皆保険、診療報酬といった面で一見充実しているように見えますが、実際にはその便利さ故に、患者の適切な医療選択を妨げている部分もあります。
これを改善するためには、国民のヘルスリテラシーを高めていくことが重要です。情報を正しく理解し、適切に活用する力を身につけることで、患者は自らの健康についてより良い選択をすることができ、結果的には医療制度全体の効率化につながるでしょう。こうした取り組みを通じて、医療の持続可能性を確保し、将来的にも安定した医療サービスを提供できる社会を目指していくことが求められています。
2. 国際比較: 米英の事例から学ぶ
地域住民の受療行動を分析すると、米国では家庭医を中心に診療が行われ、必要に応じて専門医や大学病院に紹介されるシステムが組み込まれています。これは、限られた医療資源を効率的に活用するための方策の一つと言えます。また、英国においても家庭医を基盤とする受療システムが根付いており、これにより地域医療が機能しています。
日本との大きな違いとして、医療機関の集中度が挙げられます。日本では大学病院への患者集中が顕著であり、軽症であっても大病院を訪れるケースが多く見られます。これは、医療の〝私物化〟や医療信仰が背景にあると考えられ、日本の医療制度の課題の一つと言えるでしょう。米英の事例からは、医療資源の最適な配分と住民のヘルスリテラシー向上がいかに重要であるかを学ぶことができます。
3. 質重視の医療への転換
医療経済学の視点からは、質を重視することによる医療資源の効率的な活用が注目されています。一橋大学の井伊雅子教授は、「Less is more」という考えが医療の持続可能性の鍵であるとし、医療資源の適切な配分が重要だと提言しています。
さらに、将来に向けた医療の持続可能性を考える上では、患者と医療提供者のコラボレーションが不可欠です。患者が正しいヘルスリテラシーを身につけ、軽症であれば大病院に頼らず、適切な医療機関を選択する意識改革が求められます。
過剰な医療依存を減らし、本当の意味での健康を手に入れるためには、すべての関係者が質の向上を目指して協力する必要があります。患者自身が受療行動を見直し、日本全体で医療の質を高めていくことが求められています。
4. 日本人が考えるべきヘルスリテラシー
特に医療の分野では、情報の誤解や信頼性の低い情報によって、患者が不適切な判断をすることがあります。これには、医療従事者の側からの情報提供が不十分なケースも含まれます。患者自身が情報を吟味する力を持つことが求められています。
したがって、こうした状況におけるフェイクニュースに対抗するための対策が問われています。フェイクニュースは、時に信じがたい内容でも説得力を持ち、多くの人を誤った行動に導く可能性があります。このため、情報の真偽を見極める能力の向上、つまりヘルスリテラシーの向上は、日本人が今後考えていかなければならない重要な課題です。
5. まとめ
しかし、これらの制度により医師と患者の間には対立が生じやすいという課題もあります。
特に、短い診察時間で効率を重視する医師と、医療に過剰な期待を抱く患者という構図が見られます。
このような状況では、医療の質が問われる場面も多く、ヘルスリテラシーの向上が求められるのです。
日本の医療が持続的であるためには、制度を見直すだけでなく、患者自身が医療について正しい知識を持ち、適切な判断ができるようになることが大切です。
国際的な比較からも見えるように、量よりも質を重視する医療の考え方が日本でも一層広まることが求められています。
最近の研究では、米国と英国の医療機関利用の傾向にもそれが表れており、日本もその方向に向かうべきという声が増えているのです。
日本の医療制度が抱える問題を解決し、誰もが安心して受けられる医療を実現するためには、まずヘルスリテラシーの向上を目指すことが必要不可欠です。
質重視の医療を目指して、医療制度の改善が急務となっている今、一人一人が医療との関わり方を見直すべき時期に来ています。
コメント