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看護診断の現在地と未来を考える

日本看護診断学会は、会員数減少の中、看護診断の重要性を再認識し、柔軟な方向性の見直しを進め、質の高い患者ケアを目指す。


1. 日本看護診断学会の概要と背景

日本看護診断学会は、看護診断の推進とその発展を目的に立ち上げられた学会です。
この学会の活動は、看護師が患者の状態を的確に診断し、それに基づいてケアを実施する能力を高めることを目指しています。
日本看護診断学会は任意団体として運営されており、多くの看護師が参加していました。
しかし、最近では会員数の減少が著しく、学会の存続が危ぶまれている現状です。
会員数が減少している背景には、看護現場での診断活用が不十分であることや、診断作業が「時間がかかる」などの誤解が存在することがあります。
また、看護診断はその診断的思考を培う機会を与え、多くの看護師が臨床推論力を向上させるための大切なツールであることが強調されています。
日本看護診断学会では、2024年度における組織の見直しや、より多くの看護師が診断活動に参加できる環境作りが求められています。
これにより、看護の質を向上させ、より良い患者ケアを実現することが期待されています。
新たな診断の導入や国際交流の推進も重要な課題の一つであり、これらを通じて日本看護診断学会は次のステージを目指しているのです。

2. 第31回日本看護診断学会学術大会の振り返り

2025年8月初旬に旭川医科大学にて第31回日本看護診断学会学術大会が開催されました。大会の2日目に参加した筆者は、直接対面でのプログラムが進行される中で、看護診断の現在地を見定める価値を実感しました。本大会は2日間にわたり、看護診断の重要性が熱心に議論され、特に臨床現場での普及の遅れに焦点が当てられました。

大会のメインテーマ「もっと活かそう! 看護過程・看護診断」に関連し、升田大会長は、看護診断が「時間がかかる」「実践に直結しない」といった誤解が普及の障害となっているとの指摘を行いました。これに対し、正しい診断的思考を活用することで、深いアセスメント力と臨床推論力を養うことができると説明されました。

1日目には、「NANDA-I看護診断分類2024-2026:何がどう変わった?」をテーマに上鶴重美氏の講演が行われました。看護診断が267から277に増加し、診断名や用語の刷新が多数行われた背景には、最新のエビデンスに基づく再検討と、多角的な用語の追加が挙げられます。

さらに、2日目のシンポジウムでは「看護基礎教育と臨床の現状」について、慶應義塾大学や京都大学の取り組みが発表されました。看護過程の連携が報告される中で、情報の共有と連携の重要性が再認識されました。

しかし、目標の参加者300人には届かず、266人の参加に留まりました。この状況下、静かな学会の雰囲気が逆に新鮮で貴重な時間となったと感じました。今後もより広範な普及を目指し、看護診断の重要性とその展望についてさらに議論を深めていくことが求められます。

3. 看護診断の進化と課題

現在、看護診断の分野では、最新の進化といえる変化が進行中です。
しかし、そうした進化には同時に課題も伴っています。
まず、診断名の追加や変更が相次ぎ、その中で新たな診断名が多数追加されています。
これにより、看護師はさらなる知識の更新が求められる状況にあります。
さらに、診断用語の中には、これまで不明確だったものがあり、その明確化が進められています。
これにより、現場での混乱が減少することが期待されています。
一方で、性別に依存しない表現への移行も進められています。
特にジェンダーに配慮した用語の使用は、現代看護において非常に重要なテーマです。
さらなるエビデンスに基づいた診断の見直しや、多角的な診断用語の追加により、看護診断はますます臨床に直結したものとなっていくでしょう。
しかし、このような新たな診断の追加や用語の変更がもたらすデメリットも考慮する必要があります。
特に、現場で働く看護師の教育や研修において、新たな診断に対応するためのトレーニングが必須となります。
また、診断用語が一部の看護師には理解しづらいケースもあり、看護師間での認識の統一を図ることが重要です。
このように、看護診断には進化の機会が広がる一方で、その実施には慎重な取り組みが必要とされています。

4. 日本看護診断学会の将来構想

日本看護診断学会は、現在、会員数の減少という厳しい現実に直面しています。この状況を受け、学会自体の方向性を再検討する時期が来ています。学会名称や目的の再考が進行中であり、これらの見直しは急務と言えるでしょう。

学会はまだ法人化されていないため、方向性を比較的柔軟に変えることが可能です。この利点を活かし、学会は今後どのように進化していくべきかを真剣に考える必要があります。例えば、NANDA-Iの日本組織として連携しつつ、日本版看護診断学に特化した開発研究を進める方向にシフトすることも一案です。

2024年度報告書では、会員数の減少や資金面の課題に触れ、学会としての強化策の一環として、学会名称の再考や目的の見直しを継続審議することが提案されています。特に看護診断の定義やWebサイト、会員管理システムの活用に関しても議論が進められており、これらは会員の満足度を高め、学会の活性化に寄与する可能性があります。

日本看護診断学会が抱える問題は多岐に渡りますが、これを転機として新たなステージへと進むチャンスでもあります。次期執行部のリーダーシップの下、学会は将来構想を具体化し、その目標に向けて実行力を発揮すべきでしょう。

5. まとめ

看護診断は、医療現場でのケアをより具体的かつ効果的にする重要なプロセスです。
しかし、日本における看護診断の普及はまだ道半ばと言えます。
その普及を阻む要因として多くの誤解が存在します。
例えば、看護診断が時間を要するとか、診断が実践に直結しないといった誤解です。
しかし、これらは本質を見ると、看護診断が的確なアセスメントと臨床推論力の向上に寄与するものであり、長期的にみて非常に重要なスキルであると考えます。
\n\nまた、国際的な看護診断の分類も改訂を重ね、診断名称や用語の明確化が進行しています。
この国際的動向に適応するだけでなく、日本独自のニーズに合わせた診断名称の再評価も必要です。
そのためには学会や看護教育の場で、看護診断の理解と応用を深めることが不可欠です。
\n\nさらに、看護診断に関する学会自体の運営にも注目したいところです。
会員数や学術大会の参加者数が減少していることは懸念材料ですが、今こそ看護診断の重要性を再認識し、組織の再編や新たな方針の策定を打ち出す機会と捉えることもできます。
未来を見据え、日本の看護診断がさらに発展するためには、教育や国際協力を基盤にして、活動を拡大していく必要があります。

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