患者主体のがん看護における症状マネジメントの実践

私は大学院でCNS（臨床専門看護師）を目指し始めた頃、『患者主体の症状マネジメント』という看護理論に出会いました。
私が入学したのは兵庫県立看護大学大学院で、この概念を学んだことは私の看護師人生において大きな転機となりました。
当時、私は看護師としての潜在的な可能性を模索しながら、主に医療者が症状を管理し、患者はその指示に従うものという考え方を持っていました。
しかし、症状マネジメントモデル（MSM）は、全く異なる視点を提供してくれました。
MSMでは、患者自身が症状の管理に積極的に関与し、看護師はそのサポート役となることが重視されます。
\n大学院でMSMを学び、私は患者主体の看護の重要性を再認識しました。
このモデルを学んだことで、私は看護師としての役割や存在意義について、深く考えるようになりました。
この経験は、私が看護師として何を大切にするべきか、どのように患者と向き合うべきかについての指針を与えてくれました。
結果として、私は看護活動の方向性を決める大きなきっかけを得ることができました。
そして、看護師としての本質を支えるよりどころとして機能しています。
私にとって、『患者主体の症状マネジメント』との出会いは幸運であり、看護師人生における貴重な一章となっています。

現代の医療現場は、非常に多忙であり、医療従事者が主体となりがちな状況が頻繁に見受けられます。このような環境では、症状マネジメントが医療者主体になることが多く、患者さんが置かれる状況は二次的になることが少なくありません。

患者主体の症状マネジメントを実現するには、患者と看護師の関係構築が極めて重要です。しかし、その関係を築くことは容易ではありません。患者さん一人一人のニーズや状況に寄り添い、共に考え行動することが求められるため、短い時間で絆を深めることは難しいからです。だからこそ、現場での工夫が必要となります。

例えば、患者さんが持つ力を引き出すことも重要な要素です。患者さん自身が持つ強みを理解し、それを引き出す看護アプローチを考えることで、より良い病状マネジメントが可能になります。そして、患者主体のマネジメントがうまくいくと、看護師としての存在意義を強く感じられる瞬間も多くなるでしょう。これは、患者さんと医療従事者が共に歩んだ成果と言えるのではないでしょうか。

この記事では、70代女性Aさんのケースを通じて、患者主体のがん看護における症状マネジメントの重要性を探ります。
Aさんは進行がんを抱え、夫と自宅で生活する軽度認知症の患者です。
外来化学療法を受ける際、特に4サイクル目の治療では投薬後の抜針を拒否するなど、看護師たちはAさんの非協力的な態度に直面しました。
この背景には治療中に感じる疼痛や不安、そして看護師や環境への恐怖がありました。
看護師たちは、Aさんの強みを引き出すためにアセスメントを行い、Aさんの視点に立ったセルフケア方法を模索しました。
例えば、治療前に夫とAさんのいつもの通りの内服を見守ることや、穿刺前に手をつなぎ温罨法を提案することなどが行われました。
このような取り組みの結果、Aさんはセルフケア行動を見せ、心穏やかに治療を終えることができました。
看護師と患者との関係構築の重要性を物語るこの事例は、患者主体の症状マネジメントを実現するためには、看護チーム全体の協力が不可欠であることを示しています。

Aさんの具体的な症状マネジメントにおける実践は、内服や穿刺前の対応において特に重要でした。
看護師とAさんの関係構築の一環として、Aさんが安心して治療を受けることができるように配慮がなされました。
Aさんは治療に対して不安を抱えていましたが、看護師たちは彼女の不安を軽減するために、治療前の内服の声掛けや、穿刺前に手をつなぐといった方法を用いることで、安心感を提供しました。
穿刺が必要な際には、冷たさを確認・共有することや温罨法を提案するなど、Aさんの反応を重視し、個々のニーズに応じたケアを行いました。
特にB看護師の精練された技術は、Aさんが安心して治療を受ける一助となり、セルフケア行動へとつながりました。
この過程を通じて、Aさん自身が持つ力を引き出し、不安を緩和し、患者の主体的な治療参加を促しました。

がん看護において、患者主体の症状マネジメントはその中心となっており、患者と看護師の強力な関係性がその基盤を形成しています。
患者の力と、それを支える看護師の専門性は、がん看護において不可欠な要素であり、双方が協力することで症状マネジメントはより効果的に行われます。
\n患者が積極的に治療に参加し、その中で自身の力を発揮することは、患者主体の介入が重要であることを示しています。
このような介入は時間を要することが多いですが、その価値は計り知れません。
実際の治療現場では、患者の不安軽減やセルフケアの促進、進行がんにおける副作用の管理など、さまざまな面で患者の意向が反映されることが大切です。
\nまた、看護チームと他職種との協働は、さらに重要です。
医療チーム全体が患者の状況を理解し、患者に対して統一したケアを提供することが求められます。
他職種の支援を受けながら、患者に最適なケアが提供されることが、長期的には患者のQoL（生活の質）を向上させることにつながります。
\n今後の課題としては、看護師が更にプロフェッショナルとしての役割を果たしつつ、患者と信頼関係を築いていくことが挙げられます。
患者と看護師の関係性は、相互理解と協力の上に成り立つものです。
常に患者のニーズに目を向け、医療者側が柔軟に対応していくことで、患者主体の看護はより充実したものになるでしょう。

がん看護における「患者主体の症状マネジメント」は、患者と看護師の関係性が基盤となります。私がこの概念を知ったのは、看護大学在学中のことで、その時からこのモデルは私の看護師人生を導く指標となりました。患者主体のアプローチを実現するためには、看護師が患者理解を深め、患者と信頼関係を築くことが不可欠です。

具体例として、70歳代の進行がん患者Aさんとの出会いを紹介します。看護師はAさんが治療に対して非協力的と感じていましたが、Aさんの不安や恐怖に寄り添い、個々のニーズに応じたサポートを行うことで、協力的な姿勢を引き出すことができました。看護師はAさんに対するアセスメントを行い、彼女の強みを理解し、それを引き出すための看護力を発揮しました。Aさんのセルフケア行動が改善し、副作用管理や疼痛緩和が可能となりました。

この事例から学べることは、患者の持つ力を信じ、共に症状を管理する姿勢の重要性です。症状マネジメントには時間を要しますが、チーム全体で協働することで、長期的には効果的なケアが可能となります。看護師は「症状を持つ患者」に心を寄せ、患者主体の看護を実践することが求められています。