
1. 東京慈恵会医科大学の研究が示す、多職種ケアの重要性
それは、在宅療養を受ける高齢患者に提供される「多職種によるケア」が、家族介護者の心身に与える影響力を示したものです。
この研究は、介護者が感じる介護への否定的・肯定的な側面を評価するにあたり、多職種のケアの質がどのような影響を与えるかを浮き彫りにしました。
\n\n日本社会では、高齢化が進む中で、慢性的な病気を抱えつつ在宅で療養する高齢者が増加しています。
それに伴い、彼らを支える家族介護者の役割の重要性も増しています。
以前は主に介護の負担に関する否定的な側面が注目されていましたが、近年では、介護から得る満足感や成長といった肯定的な側面にも焦点が当たるようになりました。
\n\nこの研究では、地域医療機関で家族介護者を対象に、どのように多職種によるケアが家族介護者に影響を及ぼすかを詳細に検討しました。
特に、多職種の医療スタッフが連携して提供するケアは、被介護者だけでなく、介護者の精神的健康にも好影響を与えることが確認されました。
\n\n具体的には、医師や看護師、ケアマネジャーが協力し、家族介護者がどのように介護経験を受け入れるかを評価し、ポジティブな認識が増すほど、介護から得られる満足感も高まることが分かりました。
\n\n東京慈恵会医科大学の研究は、多職種のケアの質を賛美するだけでなく、介護者のレジリエンスや精神的ウェルビーイングを支える重要な要因であることを示しています。
この研究の結果、多職種による質の高いケアが、介護者自身の心の健康を維持し、介護の質を向上させる可能性を示唆しています。
批判的な側面だけではなく、ポジティブな側面も考慮することが、家族介護者の総合的な支援に繋がるのです。
2. 介護負担と肯定的評価の関連性
この負担の多様性は、家族介護者の負担感や精神的健康に大きな影響を与えています。
多職種にわたるケアの質が向上することで、家族介護者が感じる介護経験に対する肯定的評価が高まることが研究によって示されています。
特に、J-IEXPAC CAREGIVERSスコアが高いと、介護による喜びや満足感といった肯定的側面が強く関連することが確認されています。
これにより、否定的側面の軽減が期待でき、その結果として、介護者のレジリエンスや精神的ウェルビーイングが向上する可能性が示唆されています。
このような多職種によるケアの質が、家族介護者に重要な支援となっていることが分かります。
3. 研究で用いられた評価ツール
特に、日本における急速な高齢化により、在宅で生活する高齢者へ提供されるケアが、介護者にとってのサポート体制として不可欠です。
従来の研究は介護負担感に注目していましたが、近年ではその肯定的側面、たとえば介護によって得られる満足感や成長に注目が集まっています。
\n\n東京慈恵会医科大学の研究では、地域医療機関での多職種によるフォーマルケアの質が、家族介護者の認識にどう関連するかを検討しました。
2022年11月から2023年3月までの間に、質問票を用いた横断的観察研究を行い、65歳以上の要介護高齢者とその家族介護士を対象に行いました。
この研究では、300名への質問票配布の結果、251名から有効回答が得られました。
\n\n評価指標として、日本語版尺度のJ-IEXPAC CAREGIVERSを用いました。
12項目にわたる家族介護者の経験を、5段階で評価します。
これにより、介護から得られる喜びや満足感を測るPACおよび、介護に伴う辛さや難しさを測るNACを用いた介護経験の評価が行われました。
J-IEXPAC CAREGIVERSスコアが高い群において、PACスコアも増加し、逆にNACスコアは減少する傾向にありました。
これにより、多職種による質の高いケアは、家族介護者の肯定的な介護経験を促進させることが明らかになりました。
\n\n同研究では、多職種によるケアの質的評価指標としてのJ-IEXPAC CAREGIVERSの普及や、他地域、他疾患群へ応用することが期待されています。
さらに、量的側面との相互作用にも着目し、地域包括ケアモデルの構築が求められています。
このように家族介護者の支援に不可欠な多職種ケアの質向上は、介護者自身のウェルビーイングをも支えると言えます。
\n詳細は慈恵大学のWebサイトに記載されていますので、ぜひご参照ください。
4. 今後の展望と課題
さらに、縦断研究による因果関係の解明は、介護の質改善に向けた具体的な道筋を示すものです。これにより、介護者の心理的、感情的支援が強化され、より質の高いケアが提供されることでしょう。しかし、これには長期的な視点での継続的な研究とデータの蓄積が不可欠です。
また、多職種ケアの質と量の相互作用にも注目が必要です。ケアの質を高める一方で、必要な量を確保することは、介護者にとって大きな課題です。これに対し、地域包括ケアモデルを構築し、地域ごとの特性に応じた柔軟なケア提供体制の確立を進めることが求められます。このような取り組みの成功が、持続可能な介護環境を実現する鍵となるでしょう。日本や他国での地域包括ケアモデルの構築例やその成果が、今後の指針となることが期待されます。
5. まとめ
多職種ケアは医師、看護師、薬剤師、ケアマネジャーなどが連携し、被介護者と家族介護者の双方に有益な支援を提供します。この連携は、家族介護者の介護経験の肯定的側面を評価する重要な指標となります。研究によれば、質の高い多職種ケアを受けることで、家族介護者の介護への肯定感が高まり、介護負担の軽減に貢献する可能性があります。
研究は、2022年11月から2023年3月の期間に行われ、日本関東地域の6つの無床診療所が対象となりました。研究には、65歳以上の要介護高齢者と、その主要な介護を担う20歳以上の家族介護者が参加し、300名中251名から有効な回答が得られました。評価指標としては、日本語版尺度のJ-IEXPAC CAREGIVERSや、PAC、NACなどが使用されました。
研究結果は、多職種ケアが家族介護者の精神的ウェルビーイングに寄与すると同時に、日本におけるレジリエンス向上の基盤としての重要性を確認しました。さらに、他地域や他疾患群への応用が期待されるとともに、地域包括ケアモデルへの活用が望まれています。
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