
1. 飛沫感染と空気感染の違い
飛沫感染とは、主に人が会話やくしゃみ、咳をした際に放出される大きな飛沫によって広がる感染経路です。
一方で、空気感染は微小なエアロゾルによって感染が広がる経路です。
新型コロナウイルスの流行初期には、主に飛沫感染が注目されていましたが、空気感染の可能性も次第に指摘されるようになりました。
世界保健機関(WHO)やアメリカ疾病予防管理センター(CDC)は、当初、飛沫感染が中心であると考え、空気感染の可能性を否定していました。
しかし、その後の研究で、合唱団などに代表される「スーパースプレッディング現象」は空気感染でしか説明できないとする意見が出始め、多くの科学者が空気感染のリスクを認めるよう訴えかけました。
その結果、WHOとCDCは立場を改め、ガイドラインを更新しました。
これにより、感染対策の優先順位も変わり、特に屋内の換気が重視されるようになりました。
また、エアロゾル感染への対策として、フィット感の高いN95マスクの重要性が再認識されています。
このように、感染症対策は科学的な知見の進展に伴い進化しています。
2. WHOとCDCの見解変化の背景
2020年7月には、239名の科学者がWHOに対して公開書簡を送り、空気感染のリスクを再評価するように要求しました。この圧力を受け、WHOとCDCは徐々にその認識を改め、ガイダンスを更新していくことになりました。彼らが抵抗する背景には、既存の飛沫感染中心の感染制御体制を見直す必要性が生じるという問題がありました。それでも、感染予防の対策として、マスク、手洗い、社会的距離の確保だけでは不十分とされ、屋内の空気換気が新たに重要視されることとなりました。特に、顔に密着するN95マスクなどがより重視されるようになり、対策の優先順位が変わったことは対策全体に大きな影響を及ぼしました。
3. 3種類のマスクとその効果
N95マスクは、微細なエアロゾルを95%以上除去することができるため、高い感染予防効果があります。特に、顔へのフィット感が高いため、飛沫感染のみならず空気感染の予防にも適しています。医療現場やリスクの高い場所での使用が推奨されています。
一方、サージカルマスクは主に飛沫の拡散を防ぐことを目的としています。大きな飛沫を防ぐには効果的ですが、N95マスクに比べて顔との密着度が低く、エアロゾルの吸入を完全に防ぐことは難しいです。そのため、日常生活における一般的な予防策としては有効です。
布マスクについては、他人への飛沫拡散を抑制する目的で使用されます。ただし、フィルター性能やフィット感が他のマスクに劣るため、感染予防効果はあまり期待できません。家庭やコミュニティでの非対面の活動には役立つでしょう。
これらのマスクは、用途や環境に応じて適切に選択することが重要です。実際の使用時には、マスクの特性を理解し、自分が置かれた環境に最適なものを選ぶよう心掛けましょう。
4. 正しいマスクの選び方と使い方
特に、エアロゾル感染対策として推奨されるのがN95マスクです。N95マスクは微小なエアロゾルを95%以上ろ過し、顔にしっかりと密着するため、感染予防には最も効果的です。飛沫感染からだけでなく、空気中のウイルスからも着用者を守る能力があります。しかし、N95マスクは高性能ゆえに長時間の使用には不向きとされることもありますので、使用シーンに応じた使い分けが必要です。
一方、サージカルマスクは主に大きな飛沫をブロックすることで着用者を保護しますが、顔との間に隙間ができやすいため、エアロゾルの吸入防止には十分とは言えません。日本で販売される不織布マスクはJIS規格に適合したものだけが「医療用マスク」として市販されています。これに対して、布マスクは主に他人への飛沫感染を防ぐ効果がありますが、フィルター性能とフィット感の両方が低く、自分自身を守る効果は限定的です。
マスクの使用方法も重要です。着用時には鼻や口、顎をしっかり覆い、顔にフィットさせることが大切です。また、使用後は一般家庭の取り扱い食品と同様に、適切に廃棄することで二次感染のリスクを避けることができます。最も適したマスクを正しく選び、使うことで、感染予防の効果を最大限に引き出しましょう。
まとめ
飛沫感染と空気感染は、異なるメカニズムによってウイルスが広がりますが、いずれの場合も適切なマスクの選択が感染リスクを低減します。
まず飛沫感染は、ウイルスが含まれた大きな飛沫を他者に接触させることによって感染が広がることです。
これに対して空気感染では、非常に小さなエアロゾル状のウイルスが長時間空中を漂い、これを吸い込むことによって感染します。
新型コロナウイルスの感染予防の初期には、WHOやCDCは飛沫感染を主な感染経路と捉えていましたが、その後の研究や報告を受け、空気感染への対応が重要であると再評価されるようになりました。
感染経路に応じたマスクの選び方も重要です。
N95マスクは、微小なエアロゾルを95%以上除去する能力があり、飛沫・空気感染共に効果的に抑制します。
しかし、これに対してサージカルマスクは主に飛沫に対する防御効果があり、エアロゾルに対しての効果は限定的です。
さらに布マスクは、他者への感染拡大を抑えるために有用であるものの、自身の感染防止には効果が低いとされています。
したがって、環境や活動内容に応じて、最も適したマスクを選び使用することが求められます。
特に、密閉された空間や多くの人が集まる場所では、フィット性の高いマスクの使用が推奨されます。
空気感染リスクを少しでも下げるために、換気の改善も併せて行うことが重要です。
感染予防は、マスク選びだけでなく、手洗いやソーシャルディスタンスの確保、環境整備を含めた総合的な対策が求められます。
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