
1. 介護職員不足の現状と背景
特に、少子高齢化が進む中、労働年齢人口の減少が進み、介護職員の確保は一層困難になっています。
そして2025年には、いわゆる「団塊の世代」が後期高齢者の仲間入りをすることで、この傾向はさらに強まると予想されます。
このような状況下で、新たな介護職員のキャリアモデルとして「山脈型」が誕生しました。
2. 「山脈型」キャリアモデルとは?
これは、介護人材不足の社会的課題に対応し、介護者が自らのペースと意欲に応じて選べる複数のキャリアパスを視覚的に表現したモデルです。
この「山脈型」モデルは、従来の単一路線であった「富士山型」に代わり、介護従事者が自身の志向と能力に応じて多様なキャリアルートを選択できる環境を提供することを目指しています。
具体的には、介護実践から始まり、介護福祉士の資格取得後、指導者や経営層、専門スキルの活用など、多様なキャリアパスが続きます。
この構成により、介護職員は自ら望むキャリアを追求しつつ、ライフステージの変化にも対応した柔軟な働き方を模索できます。
「山脈型」モデルの導入は、賃金や人事評価といった現状の課題を克服し、介護職の定着と離職防止に繋がると期待されています。
3. 従来の「富士山型」モデルの課題
このモデルは、頂点を目指して一筋に上り詰めるようなキャリアパスを描いていました。
具体的には、介護職員が専門性を高め、最終的にマネジメント職を目標とする直線的な道筋です。
しかし、このモデルにはいくつかの課題が存在したと言えます。
まず、キャリアが単線的であるため、多様性に欠ける点が指摘されています。
介護の現場では、様々な背景を持つ人材が必要とされる中、単一のキャリアパスはその人材の多様性を阻む可能性がありました。
\n\nまた、個々の職員が自律的に自身のキャリアを選択し、形成することは難しい状況でした。
職員が自分の適性や希望に応じたキャリアパスを歩むには、この単線的なモデルでは不十分だったと言えるでしょう。
\n\nさらに、2015年からの進展が限られていたことも課題として挙げられます。
富士山型モデルの導入によって、多様な人材が介護分野に参入し、定着したとは言い難い結果となりました。
このため、2025年以降も介護人材の確保と定着、そして離職防止が大きな課題となっています。
\n\nこれらの背景を踏まえ、新たに提案されたのが「山脈型」モデルです。
こちらは、従来の単線的なアプローチから脱却し、もっと柔軟で多様なキャリア構築を目指しています。
個人の能力や志向に応じた複数のキャリアパスを設け、多様な人材が自分らしいキャリアを築けるような仕組みとなっています。
4. ねらい目の「山脈型」キャリアモデル
このモデルが目指すのは、単にスキルを高めるだけでなく、各個人のペースでキャリアを積み重ねていくプロセスです。特に、育成・指導者としての道や、経営層への昇進、特定スキルの深化など、多様なキャリアルートが描かれています。また、ライフステージや個々の状況に合わせ、柔軟な働き方を可能にすることも重要な要素です。
このような柔軟性は、介護職員の離職防止や人材定着にも大きく貢献します。職場環境の改善を図ることで、介護人材の確保へと繋げる狙いがあります。さらに、このモデルに関する実証事業では、職員の意欲や事業所のビジョンに基づいたキャリアパスの構築が進められ、介護業界全体の発展に寄与することも期待されています。
「山脈型」キャリアモデルの導入は、介護職員に自己成長と質の高い生活をもたらすだけでなく、介護業界の持続可能な発展を支えるものとなるでしょう。厚生労働省による普及促進活動が求められており、今後の動向にも注目が集まります。
5. まとめ
このモデルの導入により、介護職員は自身のキャリアをより自由に設計することができ、結果的に業界全体の安定と発展につながる可能性があります。また、キャリアモデルの複線化は、職場環境や職員の満足度の向上にも寄与すると考えられています。
2025年5月に厚生労働省が開催した専門委員会では、「山脈型」モデルが取り上げられ、今後の施策として期待が寄せられています。具体的には介護人材の定着促進や離職防止を目的としたモデル事業が進行中であり、職員の教育訓練やキャリアアップへの投資が進められます。介護職員が職業の持続性を高め、やりがいを感じながら働くための基盤となるでしょう。
この新たなキャリアモデルは介護業界にどのような変化をもたらすのか、現場での実施とその後の影響を注目する必要があります。そして、関係者間でどのような議論が行われ、実施される施策がどのように実現されるかが重要となります。最終的には、介護業界全体の発展へと結びつくことが期待されています。
コメント